2020年2月5日水曜日

肩の力で世界を変える

 日本人はとにかく「肩の力抜けよ」というセリフが大好きですよね。僕は子どものころからこのセリフをいろんなところで見てきました。漫画、アニメ、ドラマ、小説、とにかく日本人は「肩の力」を抜かせたいようなのです。具体的にどれだけの作品で出てきたというのは分かりませんが、確実に覚えているのは『NARUTO』ですね。まだ最初の方、サスケがナルトの急成長ぶりに脅威を感じて、自分が追い抜かされるんじゃないかとイラ立っている時。うちは一族の復活を目指す俺が、あのドベのナルトに負けるなんて許せない。ということで、サスケはカカシ先生に修行に付き合ってもらっていて、度々ナルトと喧嘩していたのですが、どうしてもムキになってしまう。そんなサスケを見てカカシ先生は「肩の力を抜けよ」と言う。


 って思ってたんだけど、探してみたらそのシーンが見つからない。あると思ったんだけどなあ……。まあいいや。


 だから、僕は子どものころから「肩に力を入れることは悪いことなんだ」と刷り込まれてきました。何をするにしても肩だけには力を入れてはならない。だからどんなときもリラックスして、力まずに、気楽に、自分のペースを崩さないように生きてきました。それが功を奏したことも多々ありました。


 例えば松屋でのバイト。松屋では毎日12時くらいになると大量にお客さんがやってきます。注文も受けなきゃいけないし、料理の提供もしなきゃならないし、丼ぶりも洗わなきゃいけないし、弁当のお客さんの対応(別窓口なの)もしなきゃいけないし、しかもその全てをミスしてはいけない。もうてんやわんやで、入ったばかりの頃は本当に大変でした。辞めたいと思ったこともありました。でも、3か月くらいすると、その大変さも慣れてきます。そうなると、いつものあの原則を思い出す余裕も生まれます。
「肩に力を入れてはいけない」
 いかんいかん。肩に力を入れてしまっていた。そうだよ。どれだけ僕があわてたって、一つ一つの料理が出来上がる時間は変わらないし、お客さんが食べ終わる時間も変わらないんだから、食券を買って並んでるお客さんを待たせる時間も短くすることなんて出来ない。だから、あわててもしょうがない。あわてる暇があるんだったら、次に何をすればいいのか、落ち着いて考えよう。
 それ以来、僕はそのテンポで一番の店員さんを自負してきました。常に落ち着いた笑顔でお客さんを等しくもてなし、提供も片づけも速い、声も出てる、文句ないじゃないか!
 というわけで、僕は「肩に力を入れてはいけない」という信条をますます強化するのです。



 でも、時々考えます。肩に力を入れること、力んでしまうことって本当に悪いことなのでしょうか?
 最近肩に力を入れてしまう時といえば、本を読む時です。読もうと思って買った本が大量にあるので、当然それらを早く読まなきゃいけないし、早く読みたいのです。でも本を読んでいると、最近なぜか集中できない。すぐに他のことを考えてしまう。「コナンのアニメの次の話見なきゃ」「運動しなきゃ」「おやつ食べたいな」「あ、猫背になってるから姿勢正さなきゃ」とかなんとか。それも当然、だって読んでいる本のすぐ周りには、他の本、iPad、スマホ、テレビなど、いろんな誘惑があるのだから。そう、ここは家。だったら外出てカフェでもいけばいいじゃない。しかし、それでもスマホとiPadは持って行ってしまう。こりゃ読書なんて永遠に無理だな……。
 そんな時、あれ? なんか読書に集中できてる! という瞬間があります(そう思った時点で集中が途切れてるんですけど)。そういう時は、目と肩に力が入っているのです。「いかんいかん」ととっさに首と肩を回し力を抜くのですが、そうすると今度はまた読書に集中できなくなっている。どうしたものか。こうなりゃいっそ思いっきり力を入れてみるか! てなわけで、最近は本を読むときには一行一行をにらみつけるように読んでいます。まあ疲れはしますが、でも読書スピードは上がりました。


 「肩に力が入ること」というのは、必ずしも悪いことというわけではなさそうです。では、なんで日本人は他人の肩の力を抜かせたがるのでしょうか? 肩の力を抜かせることで一体どんなことを回避しようとしているのでしょうか(問いを立てる)?
 肩に力が入ると、まずその人の方が凝りますね。目も疲れてしまい、伸びをすると関節がポキポキ音を立てる。たしかにそんな状態でずっといると、身体に悪そうですね。最悪の場合ヘルニアになってしまいます。「肩の力抜けよ」と言う人は、その人の身体がをいたわっているのかもしれません。



 それから、こうも考えられます。肩に力が入ると、むしろ業務はうまく進まなくなるのではないか。確かに、僕も松屋でのバイトを始めた頃は肩に力が入り、ピーク時はいつもあたふたするばかりでした。しかし一方で、本を読む時は肩に力が入っていた方が読書が速くなります。肩に力が入ると、作業効率が上がる業務と下がる業務があるようですね。肩に力が入ると、「松屋のバイト」は作業効率が下がり、「読書」は作業効率が上がります。この2つの業務のちがいは何か。
 それは、「見るべきコトの範囲の広さ」です。
 「松屋のバイト」は、見るべき範囲はとても広いです。入口付近を見て新しいお客さんが入ってきていないか、そのお客さんが何か困っていないか、料理は正しく配膳されているか、丼ぶりはまだ十分にあるか、米はまだ十分にあるか、とにかく「見るべきコトの範囲」が広いです。いろんなコトに気を配らなければなりません。このような業務では、肩の力を抜くべきです。
 それに対して「読書」はどうでしょう。「見るべきコト」は、ただ目の前の一行ですね。だったらむしろ肩の力は入れるべきと言えますね。
 つまり、ある時点での肩への力の入り加減は、その時点で集中している範囲の広さと比例しているということになります。ということは、目の前のコトに集中するべき業務であれば肩に力を入れ、広範囲のコトに気を配る業務であれば肩の力を抜くという気持ちの切り替えを意識すれば、僕たちはどんな仕事も高効率で進めることが出来るようになるかもしれません。
 もちろん、ある業務がこの2種類のどちらに分類されるのかは明確に判断できるものではりません。肩に力を入れるべき業務であっても、どれほどの力を入れるべきかは程度があると思います。「肩に力を入れるべき業務(緊肩作業)」と「肩の力を抜くべき業務(緩肩作業)」との間には、無限の「肩の力スペクトル」が広がっています。今やるべき業務が「肩の力スペクトル」のどの位置にあるのかを考え、そのレベルに合わせた力を肩に入れることが大事です。



 ただ、先ほども書いたように、肩に力が入った状態が長く続けば、当然身体に支障をきたします。だから、読書やパソコン作業、豆運びなどの「緊肩作業」では、マメに身体を伸ばしてあげることが必要ですね。どのくらいの頻度で体を伸ばせばよいのか、それも「肩の力スペクトル」の位置から算出することが可能です。



 以上、僕の仕事論でした!


 ちゃんちゃん


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